1 「スキ-誕生
その年は雪の来るのが早かったのかも知れない。或はもしかして、一族の長老が病気か何かで
冬を前にしての移動が遅れていたのかも知れない。いずれにしても 移動の前に雪に覆われピン
ンチになったのだ。
脚を取られて雪にもがく人間に比べ、 雪国の動物たちは舟底みたいな胴で支えて沈まず、深い
雪にも夏と変わらぬ行動力があったからだ。
夕食抜きの寒い夜が続いた。そんな情景が背後にあったのではなかろうかと私は想像した。発
明者は、池に浮かぶ氷片あたりにヒントを得たのかもしれない。 棒切れか樹革か、最初はそん
なものを足裏にくくり付けたのだろう。 雪に沈まないことを知り、更に長さや形を工夫し、底面
を滑らかに削って滑走性を加えた。
滑る道具(スキ-)を考え出した事により、人間は冬の原野で動物たちと対等になり、狩猟スタイ
ル(冬の生活)に革命をもたらした。
古代のスキ-は北欧山間地 (古代スカンジナビア地方)の洞窟壁画や湖底から発見されていて
発祥年代は5~6000年前との事。オリンピック種目のバイヤスロン競技はスキ-の原点。バック
カントりースキ-は、近代アルペンスキーの原点だとも言われている。

2 「今シ-ズンから始める人達へ」
スキ-は難しい・・・のではなく、難しくしている例(人達)が多いようだ。
全ての習い事は習い始めが大切。後に(上級技術へと)つながる目線の位置やスキ-の踏み方
など、自分の運動性に応じて無理なく覚えていくのが上達のポイント。 途中を省略して形だけ覚
えてしまうと、結果目標前につまずきが多くなるのは何事も同じだ。
 1)小人数で習う。 たとえば5人グループだったとしょう。自分の見てもらう時間は「5分の
   1」になり、習う人数は3人以内が限度。叶うなら1対1が望ましく、最終的にはその方が安
    上りになるのだ。
 2)小刻みに習うよりは1度に3日以上。ある程度の技術(正確なプル-クボ-ゲン)が身につ
    くまでは、無理をしてでも集中的に覚えてしまうのが2ツめのポイント。
 3)スキ-用具は「用具の項」を参照してください。バックカントリースキ-を目指すからと言
   って最初からそれ用のを全部揃える必要はなく、 スキ-板はバックカントリー用もゲレン
   デ用も同じです。
 4)フオ-ムを作って滑るのではない
   スキ-はフオ-ムを作って滑るのではなく、回転操作の反動姿勢があれなのだ。バッタ-
   が振り切った(剛球を押し返した)時の姿勢と同じで、専門用語で「外向傾姿勢」と言い、
   回転弧が鋭角になるほど姿勢は顕著になり、この姿勢の中には見る人からは見えない外
   力との押しっこらや、遠心力作用がはたらいていての姿勢なのだ。プル-クボ-ゲン後期
   には若干であるがこの姿勢の感覚を体験することになる。

3 「オ-ルランドスキ-ヤ-を目指す」
 1)<目線> 
   町中を歩く時にも人やら車やらに気を配るが、バックカントリースキ-のエリアでは樹木あ
   り崖あり、雪庇ありなのだ。障害物の早期発見にはゲレンデ以上の気配りだ。目線の確保
   はバックカントリースキ-の命であり、入門期が大切だ。
 2)<回転弧&速度>
   回転中の回転弧(タ-ンの大きさ)や速度は自分で決めた(操作した)それであってほしい
   しごく当たり前のことであるがなかなかどうしてスキ-任せのスキ-ヤが意外と多い。
   上手なスキ-ヤは滑るスロ-プの斜度や雪質に合わせての速度や回転弧の形を知ってい
   て、それで滑るから巧く滑れるんだ。
   バックカントリースキ-エリアのスロ-プは千差万別。色々な回転弧、速度でのスキ-操作
   は安心安全のスキ-に欠かせない。

4 「雪庇のフオ-ルライン下にル-トを採らない
雪崩や落石は引力の方向、つまりフオ-ルライン上を落下する。大きな雪庇の下はラインを避
けてル-トを採り、止む無く通過する場合には、一人一人間隔をおいて行動するのが安全策の
原則だ。

5 「ベルグラや樹木の枝が示す意味」
日本列島特有の冬の気象パターン(西高東低=北西の風)は樹木の枝を風上に伸びることを
許さず、高山や山稜帯での樹容は枝の伸び方が顕著であり、9割以上が風下方向(南東方向)
を指している。これに反しベルグラ(岩氷又は海老のシッポ等とも呼ばれている)は風上側に伸
びる(成長する)。日本列島特有の季節風は森林限界近くや稜線上でその様な作用で方向を示
してくれていて、それらを見て進路方向を知ることも冬山入門の第一ステップとなる。

「先行者のシュプールを当てにしない」
先行者のシュプールは、必ずしも自分たちと同じ方向に向かってのシュプールとは限らない。い
やそうじゃないんだ(別方向)と頭において参考程度にとどめ、自分たちの進む方向は自分たち
で判断するのがバックカントリースキ-のセオリー。とんでもない方向に迷い込まないためにも、
先行者のシュプールを当てにしない経験と判断力での行動。初めてのコ-スの時にも、経験コ
-スの時にも先行シュプールには要注意だ。

7 「水量の偵察は夏や秋のは当てにならない」
夏にはチョロチョロでも、雪解け季には急流になるのが谷川の常。そして春には前後一週間(滑
降日の)あたりの現地気温(風や雨量にも)に大差があり、水量は午前と午後とでもまるで違う
川になる。一週間以前の情報はあてにららず、渡渉箇所のあるコ-スでは自分の目で偵察し、
確認するくらいの慎重さが必要。苦い経験からのアドバイスだ。

8 「雪の色を見て回転場所を決める」
降り積もった時の気温やその後の気象変化で別れるが、春のスロ-プ(雪原)には新雪と旧雪
のまだら模様が交互にあって、両者は雪質(滑り易さ)に大差がある。いったんどちらかに入っ
て感触を確かめ、滑る(ブレーキの少ない)方で曲がれば回転もしやすく気分的にもいい。天然
雪には色々あってそれがまたバックカントリースキ-の魅力。色で見分けられるようになれば滑
りは一人前だ。

9 「天気のことはいつでもシ-ズン」
私の場合朝夕の天気図と日に何度か空を見て、山に行く時だけでなく四季折々の天気の傾向
を気にするようにしている。天気(気圧配置)は通常西から東へ、普通1時間に30Km移動する
と言われていて、天気の変わり目は雲の変わり目でもある。色を見て、形を見て、流れ方を見
て、それら空模様に天気図を重ねて前線の移動位置を目算し、半日後を自分なりに予想して
みよう。テレビの天気図を解説なしで見るのもトレーニングのひとつ。いまから続けていけば、
春ごろにはなにか見えてくるものがあるはずだ。

10 「イナズマ型 横滑り」
山岳スキ-の基本技術は横滑りにあり。と昔のスキ-技術書には明記されていて横滑りの重
要性は常識だった。真下への横滑り。斜め前への移動。狭い急斜面やアイスバ-ン帯での横
滑りは切り札的技であり、キックタ-ンの苦手な人は斜め後ろにスキ-をずらし、稲妻型に繰
り返して難所の脱出策にもなる。「何を今さら年代物を」と横滑り操作を笑うことなかれ、カー
ビングタ-ンの応用範囲は残念ながらゲレンデ内の範囲のみ。バックカントリースキ-は横滑
りが基本技であることに昔も今も変わりはない。

11 「現在位置を把握する」
現在位置をはっきり把握しておくことは基本中の基本。滑りの技プラスその様な技も必携であ
る旨を、ゲレンデの外に出るスキ-ヤ-(ボ-ダ- )は知っておきたい。

12 [アイスバ-ン対策」
バックカントリースキ-のエリアにも、当然のことだけどアイスバ-ン帯はある。ところが装備
(特にスキ-板)や楽しみ方が新雪(柔雪)志向に偏り過ぎてないだろうか。 新雪では例え失
敗してもスキ-板の外れる程度ですむけど、アイスバ-ン帯ではそうもゆかず、大きな滑落事
故へと発展し兼ねない。山行前にはビンデングのチエック同様エッジのチエックもしっかりやっ
て、選ぶ板は、オ-ルランドタイププラスの若干の新雪指向辺りがお薦めだ。
アイスバ-ン攻略法は乗る位置と積極性だ。ゲレンデでの滑りの際にも努めて硬い雪を選び
雪質や斜面にあった操作タイミングを見つけるといい。アイスバ-ン帯での滑りに自慢がもて
るようになれば、スキ-操作は一人前だ。



以降 随時加筆します












「バックカントリースキ-」 実践アドバイス