子供にも花粉症はある?


国立環境研究所地域環境研究グループ
新田裕史
にった ひろし


    スギ花粉症が社会的な関心を集め始めた頃、子供には花粉症はほとんどないという発言を聞いた記憶がある。話の詳細は忘れてしまったが、それを聞いて「本当かな」と思ったことが印象に残っている。花粉症のような、重篤なものとは考えられていない疾病では医療機関を受診しない患者が多く、さらに自身の症状が花粉症であると認識していない場合もある。さらに、その症状は花粉以外のアレルゲンでも同様に起こるものである。そのために有病率を把握することは非常に困難である。
現在では子供には花粉症はないと主張する人は見当たらない。しかしながら、子供における花粉症の実態を正確に述べることはむずかしい。高木は埼玉医科大学小児科アレルギー外来を受診した喘息児のスギ皮膚テスト陽性率を検討し、1980年頃から陽性率が急激に増加したこと、年齢別には3歳以降漸増して10〜12歳でピークになっていたと報告している。
   筆者らは東京都内と茨城県北部の小学校で継続的に喘息やアレルギーに関する健診を行ってきた。毎年約800名の学童にアレルギー検査を実施した結果、全学年を通じたスギ特異IgE抗体陽性率茨城では約35〜40%東京では25〜30%であった。陽性率は高学年ほど高率となる傾向がみられ、1年生から6年生までの間におおむね10〜15%の上昇がみられていた。
    ここで示された陽性率は成人について報告されているものと同等か,やや低いという程度である。したがって、スギ花粉に関しては小学生の段階で相当部分の感作が成立しているものと判断される。
陽性者のうちのどの程度が発症しているかについては確実なデータはほとんどないが、自覚症状からみて春先にのみ症状を示す典型例は数%程度であり、成人に比べてかなり低率である。
   今後花粉症、とくにスギ花粉症が成人と同様に子供自身のQOLに大きく影響を与えてくるものと考えられる。


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国立環境研究所地域環境研究グループ