花粉症の疫学


花粉症の患者数はこの数年で明らかに増加しています。厚生労働省の国民生活基礎調査でも昭和61年度の患者数を1としますと、平成7年度には1.58と増加しています。
アトピー全般の話になりますが、平成11年度の東京都衛生局の調査では3才児の41.9%に何らかのアレルギー疾患を認めております。これは医師により疾患と認定されたもので、医療機関を受診せずにいる軽微なアレルギー、例えばアトピーの予備軍といわれるアトピック・スキン(いわゆる乾燥肌)などを含めると少なくとも70%はアトピー体質(もしくはアトピーの素因)を持っていると推測されております。
東京都内全域の3才児アレルギー疾患有症率(%):平成11年度調査(東京都衛生局)
疾患名 ぜん息 ぜん鳴 アトピー性皮膚炎 アレルギー性鼻炎・花粉症 アレルギー性結膜炎 食物アレルギー じんましん その他 全てのアレルギー性疾患
都内全域 7.9 1.6 18.0 7.5 5.1 9.4 15.0 3.7 41.9
花粉症の話に戻りますが、長野県のアレルギー性鼻炎は全国でも有数の有病率を示しております。
獨協医科大学耳鼻咽喉科気管食道科教授の馬場廣太郎教授の報告では、スギ花粉症の有症率表1)は全国で2位
スギ以外の花粉症表2)でも全国2位となっております。これをどのように解釈すればいいかと申しますと、一年中様々な花粉に悩まされる可能性が高いということになります。つまり重複感作(複数の花粉に反応する体質)の可能性が高くなると言うことです。ですから一年を通して自分の症状の変化をを注意深く観察し、それぞれの花粉の出現に対し対応を早めにする必要があると考えます。
一方通年性のアレルギー性鼻炎の有症率表3)となりますと、逆に全国で45位と下から数えた方が良いくらい少なくなります。なぜ、花粉症の発症率が高いのに通年性のアレルギーの発症率が少なくなるかを検証しますと、通年性アレルギーの原因の多くは、ダニ抗原(ハウスダストの主たる原因)に依るものです。一般に、ダニ感作が多い理由としては密封された生活環境の発達と一年中通して適温を保つ生活習慣が主なものと考えられています。最近では長野県も多少変化してきましたが、今でもこたつが主たる暖房で、ストーブを嫌う生活スタイルを変えない家庭が見られます。そのため結果的にダニが増えづらい環境となっているのではないかと考えます。それでも、RAST検査などをしますと、結構高率にダニ抗原が陽性に見られますが、よく確認しますとその多くは生来長野県で育った方々でなく、いわゆる転勤族の家族の方々でした。しかし、長野県の生活スタイルも次第に変化してきており、今後はダニ抗原に感作される方々も増加すると考えられます。
従って、表4に示されるアレルギー性鼻炎全ての有症率(スギ、スギ以外の花粉、通年性アレルギーのどれかを有する有症率)を見ますと長野県が圧倒的に全国1位となっており、今後の通年性アレルギーの増加の可能性を考えますと長野県民にとって最も注意を要する疾患ではないかと考えます。
表1
スギ花粉症の有症率
  県名   県名   県名
1 山梨 26.9 17 愛知 17.5 33 鳥取 11.4
2 長野 25.9 18 和歌山 17.4 34 岡山 11.4
3 高知 25.7 19 京都 16.7 35 新潟 11.3
4 静岡 25.6 20 広島 16.6 36 愛媛 11.3
5 三重 24.8 21 山口 16.5 37 兵庫 11.2
6 埼玉 24.6 22 奈良 14.3 38 福岡 11.2
7 山形 23.1 23 大阪 14.3 39 熊本 10.3
8 栃木 22.0 24 大分 14.2 40 岩手 9.4
9 宮城 21.3 25 島根 14.1 41 石川 8.5
10 岐阜 21.0 26 香川 13.9 42 富山 8.4
11 茨城 20.4 27 福島 13.8 43 秋田 8.2
12 東京 20.4 28 徳島 13.8 44 長崎 8.0
13 千葉 20.1 29 福井 13.4 45 鹿児島 4.7
14 群馬 19.2 30 滋賀 12.5 46 北海道 2.9
15 佐賀 18.9 31 青森 11.9 47 沖縄 0.6
16 神奈川 18.1 32 宮崎 11.6  
参考文献:アレルギー科15(2):84-91,2003
1998年のアレルギー性鼻炎の全国疫学調査より
表2
スギ以外の花粉症の有症率
  県名   県名   県名
1 岐阜 18.5 17 茨城 11.6 33 石川 8.6
2 長野 17.7 18 岡山 11.3 34 高知 8.5
3 青森 17.7 19 兵庫 11.3 35 熊本 7.6
4 山形 16.9 20 静岡 11.2 36 山口 7.2
5 愛媛 16.1 21 香川 11.2 37 富山 6.8
6 宮城 16.0 22 三重 11.0 38 新潟 6.5
7 佐賀 15.3 23 徳島 10.5 39 宮崎 6.3
8 山梨 15.0 24 福島 10.3 40 岩手 6.3
9 滋賀 15.0 25 千葉 10.0 41 大分 6.3
10 愛知 14.3 26 広島 9.8 42 栃木 6.0
11 北海道 13.9 27 島根 9.7 43 群馬 5.8
12 京都 13.8 28 和歌山 9.6 44 鳥取 5.1
13 大阪 13.8 29 東京 9.4 45 長崎 4.5
14 埼玉 12.6 30 福岡 9.3 46 鹿児島 3.3
15 福井 12.4 31 神奈川 9.2 47 沖縄 0.0
16 奈良 12.0 32 秋田 9.1  
参考文献:アレルギー科15(2):84-91,2003
1998年のアレルギー性鼻炎の全国疫学調査より
* 花粉としては60種(主なものはヒノキ、シラカンバ、ブナ、カモガヤなどのイネ科植物、ブタクサ、ヨモギなど)
 スギのない北海道ではシラカンバ花粉症の増加が著しいという
表3
通年性アレルギー性鼻炎の有症率
  県名   県名   県名
1 鹿児島 30.8 17 香川 20.1 33 愛知 16.2
2 山形 27.0 18 愛媛 20.0 34 秋田 16.2
3 福井 25.2 19 東京 19.9 35 神奈川 16.1
4 山口 24.2 20 栃木 18.9 36 静岡 15.8
5 青森 23.9 21 群馬 18.9 37 高知 15.8
6 岐阜 23.4 22 沖縄 18.5 38 京都 15.4
7 宮城 23.1 23 兵庫 18.4 39 茨城 14.3
8 宮崎 23.1 24 佐賀 18.2 40 岡山 14.3
9 熊本 22.5 25 奈良 18.2 41 山梨 14.2
10 北海道 22.4 26 和歌山 17.8 42 石川 14.0
11 福岡 22.3 27 滋賀 17.3 43 徳島 13.8
12 新潟 21.8 28 三重 17.3 44 鳥取 12.7
13 広島 21.7 29 大阪 17.2 45 長野 12.6
14 島根 21.3 30 長崎 16.9 46 福島 10.8
15 千葉 21.1 31 大分 16.5 47 岩手 7.5
16 埼玉 20.4 32 富山 16.3  
表4
アレルギー性鼻炎の有症率
  県名   県名   県名
1 長野 39.1 17 千葉 31.0 33 和歌山 27.7
2 埼玉 36.2 18 香川 30.7 34 大分 27.7
3 岐阜 35.9 19 群馬 30.1 35 京都 27.7
4 静岡 35.8 20 島根 29.9 36 奈良 27.3
5 高知 34.7 21 福岡 29.2 37 北海道 25.7
6 三重 34.4 22 大阪 29.2 38 鳥取 24.1
7 愛媛 33.3 23 宮崎 28.9 39 富山 23.2
8 東京 32.5 24 愛知 28.9 40 秋田 23.0
9 山口 32.5 25 滋賀 28.8 41 岡山 22.9
10 栃木 32.3 26 熊本 28.7 42 徳島 22.8
11 山梨 32.3 27 神奈川 28.5 43 長崎 22.6
12 佐賀 32.3 28 山形 28.5 44 福島 22.4
13 鹿児島 32.2 29 茨城 28.5 45 石川 21.2
14 青森 32.1 30 福井 28.4 46 岩手 18.1
15 広島 31.9 31 兵庫 28.2 47 沖縄 17.9
16 宮城 31.8 32 新潟 28.1  
参考文献:アレルギー科15(2):84-91,2003
1998年のアレルギー性鼻炎の全国疫学調査より

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