インフルエンザ脳症
発生状況
厚生省の研究班「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究」の報告で、平成11年1月1日から3月31日までに、小児で、217例(そのうちインフルエンザの確定診断がついている例が129例)の脳症と考えられる症例があったそうです。5歳以下が全体の82.5%で、平均的な年齢は3歳前後でした。
この、217例のうち、完全に回復したものが86例、後遺症の残ったものが56例、現在経過観察中が17例、死亡したものが58例でした。インフルエンザを発症してから脳症の症状を呈するまでの期間は、平均1.4日でした。インフルエンザワクチンの接種例はなかったそうです。
原因
インフルエンザ関連脳症のほとんどの症例が、A香港型インフルエンザウイルス感染に伴って発症しています。しかし、病因は現在のところ不明で、下のようないくつかの説が考えられています。
1)インフルエンザウイルスが、ウイルス血症を介して、中枢神経系に侵入して、脳症を起こす。
2)インフルエンザウイルスが、ウイルス血症を介して、中枢神経の血管内皮細胞に感染しサイトカインが産生され、脳血管を障害し脳症となる。
3)インフルエンザの全身症状(高熱、頭痛、四肢痛、倦怠感)は、呼吸器細胞や単核球、リンパ球から産生されるサイトカインによって生じるといわれる。インフルエンザウイルス感染により、サイトカインが異常に強く産生され脳症を起こす。
4)欧米では、日本で報告されているような、インフルエンザ脳症の多発はみられないので、インフルエンザ感染に加えて、HLA、人種、薬剤等の要因も考えられている。
インフルエンザの臨床経過中に発症した脳炎・脳症の重症化と解熱剤の使用について
平成11年1月から3月までにインフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した事例に対してアンケート調査を実施し、解析が行えた181例(うち小児170例)について解熱剤の使用の関連性について検討を行っております。その結果、ジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレンの系統)又はメフェナム酸(商品名:ポンタールの系統)が使用された症例では使用していない症例に比較して死亡率が高いという結果がでました。
しかしながら、インフルエンザ脳炎・脳症においては発熱が高くなるほど死亡率が高くなることが知られています。ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸はこうした重症例の解熱に使用される傾向にあることを踏まえ、さらに統計的な解析を行ったところ、これらの解熱剤とインフルエンザ脳炎・脳症による死亡について、わずかではあるが有意な結果を得ています。
* しかし、インフルエンザ脳炎・脳症において発熱が高くなる程予後は悪くなります。(42度以上では100%死亡、41度以上では同42%)一般に今回問題となったジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸はこうした熱の下がりにくい子どもたちに使われる傾向にあります。 したがって表1の解釈にはこの点に配慮する必要があります。
| インフルエンザ脳症と年齢 |
| インフルエンザ脳症と解熱剤 |
| インフルエンザ脳症と発症までの日にち |