崩壊熱


 原子炉が核分裂を停止しても、炉心内にはそれまでに生成された核分裂生成物が蓄積している。それらの核分裂生成物はそれぞれの物理的な特性に従って崩壊し、放射線を出す。その放射線エネルギーの大部分は原子炉内で熱に変換される。その熱を崩壊熱と呼ぶ。
 その発熱の割合は原子炉の運転期間に依存しているが、代表的なものを下の図に示す。この発熱があるということは原子炉の安全性に関してきわめて大きな意味を持つ。なぜなら、原子炉内の核分裂反応を停止させることができ、核分裂による発熱をゼロにすることができたとしても、すでに炉心に蓄積して発熱を続けるこの崩壊熱は決して人為的に止めることができないからである。車にたとえて言うならば、たとえば車の車輪が外れてしまったときにエンジンを切ることができても、ブレーキが効かず、車輪がないまま車は走り続けなければならないといった状態になるのである。