原子炉内に蓄積する放射能の量


 

 原子力発電の基本はやかんの湯を沸かすことで、火力発電と変わらない。違いは、火力発電では石油や石炭を燃やし、原子力発電ではウランを燃やすことである。石油や石炭を燃やせば水と炭酸ガス、それに硫黄酸化物や窒素酸化物が生じる。一方ウランを燃やす(核分裂させる)と核分裂生成物(放射能、死の灰)が生じる。今日では標準的となった100万kWの原子力発電所の場合、一年の運転毎に約1トンの核分裂生成物が生み出される。広島原爆がばらまいた核分裂生成物が750グラムであったことと比べれば、1000倍以上の放射能となる。そして何よりも問題なことは、私達がそれを無毒化する手段をもっていないことである。
 これほど厖大な放射能を抱えた原子力発電所がひとたび事故を起こせば、その被害が破局的なものとなることは避けられない。1986年に発生した旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所の事故の場合、原子炉内には広島原爆2600発相当の放射能が含まれていた。その状態で原子炉が爆発し、広島原爆の800発相当の放射能がまき散らされた。その比較を図に示す。