人類が一つの生物種としてかってないほどの繁栄をした原因は、火を含めたエネルギーの使用にあった。右図に人類が使用してきたエネルギー量の変遷を示す。生物体としての人は、生命を維持するために食物として一日約2000キロカロリーのエネルギーを必要とする。地球上に現れて以降ずっと、人類はほぼそのようなレベルのエネルギー消費で生き延びてきた。一万年ほど前に農業が始まり、エネルギー消費は約一桁大きくなったが、爆発的なエネルギー消費の拡大は産業革命が起こった200年前に始まった。
 図の横軸(時間を示す軸)には注意が必要である。なぜなら、この軸は過去については縮小し、現在に近づくにしたがって拡大してある。産業革命後の200年という時間の長さは人類という生物種の歴史の長さと比べれば極めて短い長さであるため、時間軸を普通の方法で描こうとすれば、とうてい描ききれない。たとえば大きな画用紙を用意し、400万年を400o(40p)の長さで示すとしよう。そうすると、農業が始まって以降の1万年は1o、産業革命以降の200年は100分の2oにしかならない。人類がエネルギーを大量に使いだしたのは、人類の歴史の中でごく最近のことに過ぎない。そのことは地球という惑星の側から見るとさらに著しい。46億年の地球の歴史を右と同じ時間スケールで描こうとすれば、46億年は460mとなってとても画用紙には描ききれなくなってしまう。460mに相当する時間の流れの最後の最後100分の2oの部分で、地球にとっては単に一つの新参生物種に過ぎない人類が、厖大なエネルギーを地球上で使いだしたのである。
 それが如何に異常なことであるか、図に示す。400万年生き延びてきた人類の歴史の中で、20世紀の100年だけで約60%のエネルギーを消費したのである。

人類のエネルギー消費の歴史