潮風に包まれて、
水平線の彼方から、
波は蕩来し、蕩去し、
幾星霜も続いたであろう、
繰り返しを、
今日の春の長閑な日々も反復する。
私の足元に、
寄せては引く流砂は、
どのくらい遠方から、
はるばると来たのだろうか。
あるいは、どこの峻険を削って、
海に辿り着いたのだろう。
私の思惟に関係なく、
あくまで海は青く、
水平線は遠く、
潮風は優しく頬を撫でた。
春の日の午後、
ただ、海を見て、
ひとり、茫然として佇む。
まるで憑き物がついたように。
やがて、決然と背を向けて、
遠くなる潮鳴りを聞きつつ、
歩む足取りの確かさを確認する。
海、春の一日、満ち足りた気分。
また、潮風を匂ぐ日まで、
圧倒的なスケールで私の心を支配するに違いない。
2007.04.30 奴名川姫の郷にて
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