お題015・ラジオ
――ザーッ、ザッ、ザ……
はーい、今日もはじまりました、「オーキド博士のポケモン講座」
お相手は、わたし、クルミが担当しまーす。
おお、全国のトレーナ諸君、今日もポケモンを捕まえておるかね?
ええと、36番道路には……
ぶつっ――
あまりにも熱心だったから、嫉妬したのかもしれない。
「オイオイオイ、何で切るんだっての! 折角あと少しでクルミちゃんが喋ったかもしれないってのに!」
くるりと振りむいて、ゴールドが叫んだ。
まあ正直に言えば理由など思いつかなかったのだが。
「切りたかったから、だな」
「んだと!? って、機嫌悪いな、シルバー。オレに八つ当たりか?」
なんて見当はずれなコメント。これだから……
これだから? 自分は彼に対して何を考えてるんだ?
「……図星?」
「全然。『機嫌が悪い』も、『八つ当たり』もあってるが、目的語が違う」
冷たく見えるようにいってやると、彼は眉を顰めた。優美な金色が、困惑気味に空を彷徨う。
「……モクテキゴ?」
そこか、引っ掛かるポイントは!
流石に呆れたような表情になって仕舞っていたらしい。こちらを向いたゴールドが、あ、と呟く。
「なんだ、そんなに機嫌が悪いわけでもなかったのか」
「…………?」
「は? 顔に出てるぜ?」
思わず顔を触る。笑われた。
「顔に書いてあるわけ無いだろ、意外に単純なんだからな、シルバーは」
「単純?」
「……何があったんだよ、まったく、訊いてやらないと喋らないんだからな」
別に聞かれでもしない限り、自分から話す様な意味のある話題ではないことが、多いからなのだが。
「……別に」
答えて、彼が座り込んでいるところに行って、後ろから抱きつく。
見方によっては、縋り付いているかのようにも見えたかもしれない。
「……たく、もしかしてあれか? 嫉妬?」
くすぐったそうに首を少し傾げてから、ゴールドが意地悪く訊いてきた。
答えないことにして、少し多めに体重を預ける。
くすくすという笑い声が、背中から響いてきた。
「図星だろ。……ホント単純なんだからな」
「自意識過剰じゃないのか?」
言い返してやると、彼はまた微かに笑った。
「いいの。そのほうが幸せだし。……オレが」
彼が腕を伸ばして、ラジオをつけた。ゆったりとした音楽が流れ出す。
「――『ポケモンミュージック』DJセージがお送りします。今日はシックに、ポケモンこもりうた――」
ゆるやかに流れていく音が、二人を包んで流れていった。
終わり。